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Mar.8th |
レビュー |
私の参加するCD"Mosaic Structure"について イタリアのジャズジャーナリストNico Conversano氏による記事がウェブマガジンJazz Conventionに掲載されました。 以下日本語訳 〓バンドにおけるベーシストの役割はバンドメンバーが心地よい音楽の旅を共にするために、 目的である方向を見失わず導き続け舵をとることである リーダーとしてデビューしたベーシストの畠山令はそのことはもちろんそれ以上のことを凌駕する 彼は彼自身の音楽表現を突き詰めるべくアルバムの中のほとんどの曲を自ら作曲し、その道筋を指揮する 神戸で生まれボストンのバークリー音楽大学で研鑽を積んだ畠山はサイドマンとしてだけではなく ジャズグループのリーダーとして頭角を表し、自身のジャズ表現を最も新しい形につくりあげた 彼の曲のそれぞれが多重構造であることは明らかで音楽として様々な解釈が可能である 謎めいた彼の作曲法の根源が彼の音楽の中にありありと存在し、いつ聴いても新しい発見があり興奮せずにはいられない デビューアルバムの"Mosaic Structure"より アルバムのオープニングを飾る"Two in One" この曲は6/4のベースラインから始まり4/4のダブルテンポのサイクルをくりかえす 曲中のソロパートも6/4と4/4の2つの拍子で音楽が進むのだが4/4はダブルテンポではなく6/4と同じテンポで進みリズムの広がりを形成している 軽快でユーモラスなテーマの"Swangin"は奇数の小節数と予想外の加速部分をはめこんでいる "Pendulum"はまさにイリュージョンである 何より催眠術をかけるような3/4のワルツのリズムの中で 吉田のピアノは高尚なサウンドと繊細な浮遊感で幻想的な世界を表現している 畠山のソロベースで演奏される"Dance of Thelonious"と"Autumn Leaves"のオープニングには 彼の自由な表現と豊富な演奏スタイルが集約されている そして、このアルバムに決定的な功績を与えたのは明快で鋭い浅井のアルトサックスである 浅井の音は畠山によってかかれたメロディーを充分に理解しており、繰り広げられるその音には邪念が一切ない 特にジャズスタンダードの"Autumn Leaves"は印象深い巧妙な即興演奏を組み立てて披露し、 うそ偽りのない情熱を音楽に注ぎ込んでいる "Eric the Dolphy"と"Dark Gloomy Room"はどちらの曲も印象深く、興味深いベースラインから始まり、 メインコーラスで拍子、リズムの分割が行われている。 静寂に包まれたバラード曲"Hands"は音楽の本来の形に回帰し、 ”Tower of Babel"は同じパターンを加速させてどんどん展開していく そして、この世のものとは思えぬ美しい曲"Phantom"は曲中で分解されていわゆる"Free"の形になる このアルバムのしめくくりであり、タイトルトラックでもある曲 "Mosaic Structure" この曲は彼の音楽の集大成となっている 彼のつくりだす音楽は拍子の変化、テンポの変化に加え奇数小節が用いられるなどの異質の相互作用を繰り返していく "Mosaic Structure"も同様に4/4と5/4のシーケンスでスタートする 2/4にシフトしてからそのまま4/4に進みその後テンポの速い3/4に続いていく この作品は構成、即興演奏とインスピレーション、 そして素晴らしい演奏を繰り広げるメンバー全員の間で起こる絶妙なバランスによって畠山の曲をさらによいものにしている 畠山令のデビューアルバム"Mosaic Structure"は ジャズ史に新しく名を刻むことになるだろう〓 翻訳協力:畠山令 Nicoには大変熱心に興味を持って曲の分析をしていただき アルバムの魅力を存分にかいていただきうれしい気持ちでいっぱいです。 世界中の人に聴いてもらえるといいなあと願うばかりです。 Thank you so much, Mr Nico !!! |